ObsidianをGitで同期する【2026年10月版】

Obsidianの同期を無料で済ませる方法のうち、Gitだけが持っている強みが履歴だ。公式Obsidian Syncの月額を払わずに履歴も残したいなら、コマンドに抵抗がない人にはGitが両方を満たす。
結論 リポジトリは必ず非公開(private)で作る。日々の運用はプラグインに任せてよいが、衝突したら手動で直すと最初から決めておく。衝突してもノートは消えない。両方の内容がファイルに残り、選ぶのは自分だ。
目次 / INDEX
仕組みの前に:用語は5つだけ
Gitの用語は多いが、同期に使うだけなら5つで足りる。それぞれ一言に言い換えておく。
| 用語 | 一言でいうと |
|---|---|
| リポジトリ | 履歴ごと入った保管場所。Vaultのフォルダがそのままリポジトリになる |
| コミット | 変更の記録。「この時点」として名前を付けて保存する操作 |
| push(プッシュ) | 手元の記録をGitHub(ネット上の置き場)へ送る |
| pull(プル) | GitHubにある最新の記録を手元へ取り込む |
| コンフリクト(衝突) | 2つの端末が同じ場所を別々に変えてしまい、Gitが「どちらを残すか」を決められない状態 |
同期の正体は単純で、端末Aでコミットしてpush、端末Bでpullする。この繰り返しだ。
クラウドストレージと違い、途中の状態が全部「変更の記録」として残るから、履歴が付いてくる。Git自体の基礎は大学生のためのGit・GitHub入門にまとめている。
「先週消したあの段落を復元する」「レポートの3日前の版と見比べる」が、同期のついでにできる。無料の同期方法4つの比較はObsidianを無料で同期するにまとめた。
リポジトリは必ず非公開(private)にする
GitHubにリポジトリを作るとき、公開(public)と非公開(private)を選べる。Vaultは必ずprivateにする。理由は2つ。
- publicは全世界に公開される。 授業メモのつもりでも、日記や人間関係のメモが混ざるのがノートアプリだ。「見られて困るものは書いてない」は、書き続けるうちに崩れる
.obsidianフォルダに認証情報が入ることがある。 プラグインによっては接続先のトークン(合鍵にあたる文字列)が設定ファイルに保存される。公開すればそれも漏れる
2026年8月時点で、GitHubの無料プランでもprivateリポジトリは作れる(条件は変わりうるので公式ページで確認を)。無料だからpublicにする理由はない。
セットアップ手順(パソコン側)
前提として、Gitのインストールと、GitHubのアカウント作成は済んでいるとする。認証にはパスワードではなく、合鍵にあたるPersonal Access Token(PAT)かSSH鍵を使う。
パソコンでは、ターミナルで一度だけpushかpullを成功させておくと、プラグインも同じ認証情報を使える。プラグインのドキュメントの案内はこうだ(2026年9月時点)。
- Mac:
git config --global credential.helper osxkeychainを実行してから、ターミナルで一度pushかpullする - Windows:Git for Windows(2.29以降)に入っているGit Credential Managerを使う。
git config credential.helperと打ってmanagerと出れば設定済み
PATを作るなら、GitHubが勧める「Fine-grained tokens」で、対象をこのVaultのリポジトリだけに絞る。権限はContentsの読み書きとMetadataの読み取りで足り、有効期限も付けておく。
⚠️ そして作業前にVault全体を別の場所へコピーしておくこと。どの同期方法でも、事故がいちばん起きるのは初回接続だ。
1. VaultをGitリポジトリにする
ターミナルでVaultのフォルダへ移動し、リポジトリとして初期化する。
cd ~/Documents/MyVault # 自分のVaultの場所に置き換える
git init
2. 同期しないファイルを決める(.gitignore)
Vault直下に .gitignore というファイルを作り、記録の対象から外すものを書く。ウィンドウ配置のような端末ごとに違って当然のファイルを外すと、無用な衝突がかなり減る。
.obsidian/workspace.json
.obsidian/workspace-mobile.json
.trash/
.DS_Store
⚠️ .obsidian を丸ごと外す例も見かけるが、それだとプラグインやテンプレートの設定が端末間で揃わなくなる。丸ごとではなく、端末固有のファイルだけを外すのが基本だ。認証情報を保存するプラグインを使っているなら、そのデータファイルもここに足す。
3. 最初のコミットとpush
git add .
git commit -m "初回コミット"
次にGitHubのサイト側でprivateの空リポジトリを作り(READMEの自動作成はオフにする)、表示されるURLを使って接続・送信する。
git remote add origin https://github.com/ユーザー名/リポジトリ名.git
git branch -M main
git push -u origin main
これで手元のVaultがGitHubに上がった。2台目の端末では、逆にGitHubから取ってくる。
git clone https://github.com/ユーザー名/リポジトリ名.git
できたフォルダをObsidianで「保管庫として開く」だけで、2台目の準備は終わりだ。
日々の運用はプラグインに任せる
毎回ターミナルを開いてもいいが、コミュニティプラグインのGit(旧称 Obsidian Git)を入れると、Obsidianの中からコミット・push・pullを実行できる。定期的な自動コミットと送受信、起動時のpullも設定でき、日常の同期はほぼ自動化できる。
運用の型は、開いたらまずpull(起動時の自動pullをオン)→ 普通に書く → 閉じる前にコミットしてpush。衝突を減らすコツは端末を移るときに前の端末のpushを済ませておくことで、これを守っている限り衝突はめったに起きない。
⚠️ 自動コミットの間隔を数分単位まで詰めると、履歴が既定のメッセージ「vault backup: 日時」だらけになって読みにくくなる。迷ったら間隔は長めから始めるといい。
入れたら最初に変える設定
Gitプラグインは、入れただけでは自動で同期しない。自動コミットの間隔も起動時のpullも、既定はオフだ(プラグインのソースコードの既定値、2026年9月時点)。設定画面は英語なので、名前で探す。
| 設定名 | 既定 | おすすめ |
|---|---|---|
| Auto commit-and-sync interval (minutes) | 0(オフ) | 10〜30分など。コミットしてからpull・pushまでまとめて行う |
| Pull on startup | オフ | オン。開いたときに他の端末の変更を先に取り込む |
| Commit message on auto commit-and-sync | vault backup: {{date}} | 端末名を入れると、どの端末の変更か分かる |
| Push on commit-and-sync | オン | オンのまま |
「Split timers for automatic commit and sync」をオンにすると、コミットとpushの間隔を別々に決められる。最初はオフのまま、1つの間隔で回すほうが分かりやすい。
うまく動かないとき
プラグインのドキュメントの「Common issues」にある、よくある症状と直し方だ。
- Macで
xcrun: error: invalid developer pathと出る → ターミナルでxcode-select --installを実行し、開発用ツールを入れ直す - Gitが見つからないと言われる(「Cannot run Git command」など) → 設定の「Custom Git binary path」にGitの場所を入れる。場所はMacなら
which git、Windowsならwhere gitで分かる - エラーは出ないのにpullやpushが終わらない → たいてい認証の問題。上の手順でターミナルから一度pushできるか確かめる
.gitignoreに書いたのにworkspace.jsonが記録され続ける → 先にコミットしてしまったファイルは無視されない。git rm --cached .obsidian/workspace.jsonで記録から外してコミットする
iCloudなどほかの同期と同じVaultを重ねていないかも含めて確かめたいなら、Obsidianが同期されない時の直し方が方法別の入口になる。
コンフリクト(衝突)が起きたときの直し方
解説記事の多くは繋ぎ方で終わるが、実際に困るのは衝突したときだ。
本題だ。pullしたときに次のような表示が出たら、衝突が起きている。
CONFLICT (content): Merge conflict in 講義ノート.md
Automatic merge failed; fix conflicts and then commit the result.
まず落ち着いてほしい。この時点でノートは1文字も消えていない。Gitは決められなかっただけで、両方の内容をファイルの中に残している。
1. 何が衝突したかを確認する
git status
「both modified」と表示されたファイルが衝突しているノートだ。
2. ノートを開いて、目印を探す
衝突したノートをObsidianかテキストエディタで開くと、こういう目印(コンフリクトマーカー)が入っている。
<<<<<<< HEAD
この端末で書いた内容
=======
もう一方の端末で書いた内容
>>>>>>> (相手側の記録の名前)
<<<<<<< から ======= までがこの端末の版、======= から >>>>>>> までが相手側の版だ。
3. 残す内容を決めて、目印を消す
やることは編集だけだ。残したい行を残し、要らない行と3種類の目印の行を全部削除する。
両方残したければ両方書けばいい。正解を選ぶのはGitではなく自分、というのがここの本質だ。
4. 解消をコミットしてpushする
git add 講義ノート.md
git commit -m "衝突を解消"
git push
これで完了だ。慣れれば数分の作業で、ノートを失うことはない。
途中でやめたくなったら
編集がこんがらがったら、いったん全部なかったことにできる。
git merge --abort
pullする前の状態に戻るので、深呼吸してからやり直せばいい。逃げ道があると知っていることが、Git同期を怖くなくする一番の材料だと思う。
⚠️ Gitプラグイン経由で同期していて衝突した場合も、仕組みは同じだ。プラグインが衝突ファイルの一覧を示してくれるので、ノートを開いて目印を消し、コミットし直せばいい。
マーカーの入ったままのノートを放置しないこと。放置するとその目印ごと「本文」としてコミットされてしまう。
モバイル(iOS・Android)の制約
ここはGit同期の弱点だ。
- ObsidianのGitプラグインはモバイルでも動くが、READMEで作者自身が「モバイルでの実装はとても不安定で、おすすめしない」と書いている(2026年9月時点)。大きいVaultで遅い・メモリを食う、SSHでの接続ができない(HTTPSとトークンを使う)、使えない機能があるなどの制限もドキュメントに明記されている
- 同じREADMEは、代わりの候補としてAndroidとiOSの両方で動くGitSyncというアプリを挙げている(このプラグインとは無関係のアプリ)
- iPhoneでは、Working Copyという別のGitアプリでpull・pushを行い、そのフォルダをObsidianで開く構成が定番だ。ただしApp Storeの説明では、コミットのpushは有料の機能で、無料のままではGitHubへ送れない。設定の手数も増える
- Androidでは、Termuxなどの端末アプリにGitを入れて操作する方法があるが、これは「スマホでコマンドを打つ」世界で、人を選ぶ
つまりGit同期はパソコンが主役の人向けだ。スマホでの利用が閲覧と軽いメモ程度ならプラグインの範囲で足りるが、スマホでがっつり編集するなら、モバイルに強い方法を含めて比較記事から選び直すほうがいい。
⚠️ その他の注意点
⚠️ 大きなバイナリファイルには向かない。 Gitはテキストの差分管理が得意で、画像・PDF・音声は苦手だ。
GitHubは1ファイル100MBを超えるとpushを拒否するし、重い添付が増えるほどリポジトリが膨らんで遅くなる。動画を貼るようなVaultなら設計から考え直したい。
⚠️ 同期していてもバックアップにはならない。 履歴から過去の版を復元できるのはGitの強みだが、その履歴ごとGitHubのアカウントに依存している。アカウントにアクセスできなくなれば、リモート側は使えなくなる。
同期とは別に、Vault全体を別の媒体へ定期的にコピーしておく。具体的なやり方はObsidianのバックアップにまとめた。
⚠️ 「2026年8月時点」を前提に読む。 GitHubの無料プランの条件、プラグインの名称や対応範囲は変わりうる。始める前に、GitHubの料金ページとプラグインのドキュメントで最新の記述を確認してほしい。
今日の要点
- Gitは無料同期の中で同期と履歴が同時に手に入る方法。比較は比較記事、この記事は手順の深掘り
- リポジトリは必ずprivate。ノートの中身と、
.obsidianに入りうる認証情報を守るため .gitignoreでは端末固有のファイルだけを外す。.obsidian丸ごと除外は設定が揃わなくなる- 日々の運用はGitプラグインで自動化し、端末を移る前にpushを習慣にする。自動同期と起動時pullは既定でオフなので、入れたら最初にオンにする
- 衝突してもノートは消えない。残す行を選んで目印を消し、コミットし直す。困ったら
git merge --abortで衝突前に戻れる - モバイルは制約が多く、Git同期はパソコン主体の人向け
- 履歴はバックアップの代わりにならない。別媒体へのコピーはバックアップ記事の手順で
まずはテスト用の小さなVaultで、一度わざと衝突を起こして直してみてほしい。本番で初めて遭遇するより、ずっと気楽に習得できるはずだ。
出典(公式ドキュメント・2026年9月27日時点)
- obsidian-git README(モバイルは不安定でおすすめしない、GitSync、モバイルの制限)
- Git plugin documentation(認証の設定、Common issues)
- obsidian-git の設定画面のソース(設定名)
- obsidian-git の既定値(
vault backup: {{date}}、自動同期と起動時pullの既定オフ) - Managing your personal access tokens(GitHub Docs)(Fine-grained tokensと有効期限)
- Working Copy(App Store)(pushが有料機能であること)
よくある質問
Gitでの同期は本当に無料ですか?
お金は基本かかりません。Git自体は無料のソフトで、GitHubは2026年8月時点で非公開リポジトリを無料プランで作れます(最新の条件は公式ページで確認してください)。ただし1ファイル100MBを超えるファイルはGitHubにpushできないため、大きな動画などを含むVaultには向きません。かかるのはお金ではなく、コマンドを覚える学習時間と、衝突が起きたときに自分で直す手間です。そこも含めて手順をこの記事にまとめています。
コンフリクト(衝突)が起きるとノートは消えますか?
消えません。ここがいちばん誤解されている点です。2台で同じノートを編集してしまった場合、Gitはどちらかを勝手に捨てるのではなく、両方の内容を目印付きで1つのファイルに書き込んで「人間が選んでください」と止まります。ノートを開いて残したい行を選び、目印の行を消して、変更を記録し直せば解消できます。途中でやめたくなったら、git merge --abort で衝突が起きる前の状態に戻ることもできます。
スマホ(iPhone・Android)でも使えますか?
制約付きなら使えます。ObsidianのGitプラグインはモバイルでも動きますが、パソコン版と仕組みが違い、大きなVaultで遅い・使えない機能があるなどの制限がドキュメントに明記されています(2026年8月時点)。iPhoneならWorking Copy、AndroidならTermuxといった別アプリでpull・pushを行う方法もありますが、設定の難度は上がります。スマホでの編集が多いなら、Gitにこだわらず別の同期方法と比較して選ぶのが現実的です。